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オープン・キャリー: テキサス州での銃携行の実際からアプリまで

SXSWを見ようとオースティンに行くことを考えていたのは今年(2016年)初頭ごろからなのですが、ちょうどそのころ、開催地であるテキサス州の、銃携行に関する法制度変更のニュースを目にしました。

みなさん、新規事業を生み出すには、リーガルのお話も大事ですよ! (笑)

関連するニュース記事を見ると、「やったー! これで銃による平和がさらに推進!」みたいな右利きの意見の紹介とともに、これみよがしにマシンガンを肩から下げてお買い物するおじさんおばさんの画像・動画が目に入ってきます。
ただし、学校やバー、スポーツ会場では引き続き持ち込みは原則禁止、また飲食店やホテルなど各店舗が個別に禁止のキメをするのも自由とあり、実際の運用はどうなるんだろうな、と興味深い気持ちもありました。

このオープン・キャリー法がテキサス州に施行されたのは2016/1/1のことですが、さて、この春開催のSXSWのため、2016/3/10に私はテキサス州オースティンにやってきました。通行人みな腰から銃を下げています… ということはありません。というか1人も1ミリも銃器はまだ見かけていません。

テキサス州は比較的右寄り保守的な州だそうですが、ここオースティンは例外的にリベラルな風土なのだそうです。SXSWの内容と来場者ばかり見ているせいかもしれませんが、確かに人の空気感はロサンゼルスやサンフランシスコといった西海岸同様で、扱われている議題にもLGBTやダイバーシティ関連はしばしば出てきます。街を歩くと、こんなレインボーな一角すらある。

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ただし、「ほほう、なるほど、これか!」という気付きはいくつかありました。

2種類の持ち込み禁止掲示

上に書いた通り、オープン・キャリー法では、店舗が個別に持込規制を行うことが認められています。これがその例です。場所はJW Marriottホテル。

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2つありますね。それぞれ「おことわり」している対象範囲が違います。

左のものは第30.06条に基づくもので、要は「ココには銃を隠し持って入っちゃダメ」の掲示です。これは従来からあったもののようです。

で、右の第30.07条の掲示が、今回のオープン・キャリー法に基づくもので、「むき出しで持ち込むのもダメ」を示したものです。

これらの掲示は、英語とスペイン語併記で (あれ、あったっけなぁ…) 1インチ大の文字で正確に記すこと、単なる銃にバッテンなどの表記ではだめ、など細かく規定されています。

 

背景も調べてみると、テキサス州が突出してアブナイ暴走を始めた、ということではないようです。今回の決定にまつわる報道をみて、日本人の僕は、第一印象で「うわぁ、さすがテキサス、頭の中もむっちゃくちゃ西部劇!」と思ったのですが、オープン・キャリーが認められている州は既に多数あり、テキサスはむしろ遅い部類のようです (ニューヨーク州やカリフォルニア州ではいまだに認められていません)。

また、従来でも、ライフルやマシンガンなどでかくて長い銃 (long gun) はむき出しで持ち歩くことが認められており、小型ピストルなどだけがむき出しを許されなかった、しかしそれでは抑止力アピールの面からも矛盾じゃないか、という指摘があり、今回の決定となったようです。

この報道に関して、小銃を持ち歩く人たちの映像がいっぱい流れましたが、これは数年前にこの矛盾を指摘した人たちがデモ目的で持ち歩いたときの映像のようで、今年になってから街じゅうが急にgrand theft autoぽくなったわけではありません。僕は決して市民の銃器所有や持ち歩きに与するものではありませんが、情報操作的にちょっと都合のいいネタ選びして報道しちゃった感じみたいですね。

謎の51%サイン

街ぐるみのフェスであるSXSWでは、多くのラウンジやバーもイベント会場となっているわけですが、そういったお店の入り口に、時に動線を阻むぐらいしっかりと掲示されている、謎の掲示物がありました。こんな感じです*1

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それまでは遠目に通り過ぎるだけだったので、背景の文言は読めず、なんだろうあれ? 税率にしちゃ多すぎるし、なんかやらかしたら料金の51%を徴収するぞ的なやつ? それとも脂肪分だかグルテン配合率やらの、ヘルシー的なやーつ?? とだけ思っていたのですが、これも今回のオープン・キャリー法に関係するものでした。

この法律をしてもむき出し持ち歩き禁止されている場所には、学校、スポーツ会場、そしてバーなどがあります。が、ここでいうバーとか飲み屋の定義とは何か?

51%サインとは「この店はアルコール飲料提供による収益が全体の51%以上です」を示すものでした。つまり「オープン・キャリー法でいうところの飲み屋ですよウチは」ということ。Wikipediaから引用します。
(CHL = Concealed Handgun License)

Businesses posting a compliant "51% sign" - It is a felony to carry a firearm while on the premises of a business that makes more than 51% of its revenue from the sale of alcoholic beverages for on-premises consumption (colloquially "bars", "nightclubs", "taverns", "saloons", etc.). A person with a CHL that is in violation has a defense that the establishment did not post the proper signage, as required by the Government Code section 411.204. The proper signage contains similar language as is required of all liquor license holders, but with the addition of a couple of words to prohibit licensed as well as unlicensed carry, and a background containing a red "51%" to make it obvious at a glance that the sign applies to CHL holders.

利益ベースで計算するんですね。まぁそうなるよね。

30.36/30.07/51%のサイトやアプリ

で、調べていたら、当然ながら、これらの掲示状況の共有ポータルサイトっぽいものもありました。

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https://www.texas3006.com/

当然ながら、スマホアプリもありますねー。

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地図にぽこぽこ、30.06, 30.07, 51%とかの表示が出ていて、レビューもみなイイネ! 便利! といった感じ。これが、持ち歩きたい人からの賛意なのか、抑止したい人からの賛意なのか微妙ですが、色使いがとてもスターズアンドストライプスなので、その筋の感じもします。

こういう文化問題は、現地に来てみないとわからないですねー。

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